近年、エネルギーの効率的な活用が注目を集め、その中でも産業用蓄電池が注目されていることや、そのメリットデメリットについて【前編】で詳しくお伝えしました。
【前編】
産業用太陽光発電に蓄電池をプラスするメリットとデメリットをプロが徹底比較
引き続き【後編】として、実際に設置を検討する際に気にかかる点である、蓄電池の種類や、設置の費用相場、補助金の有無について解説します。ぜひ、【前編】の情報と合わせて、産業用蓄電池の導入を検討する参考としてください。
■産業用蓄電池とは?
産業用蓄電池は、一般家庭以外の場所で運用される大型の蓄電池システムのことで、主に大規模な工場、倉庫、公共施設などの産業施設で利用されます。通常のコンセントからの充電だけでなく、太陽光発電や風力発電などの創エネ機器と組み合わせる需要も増えています。気象条件による再生可能エネルギーの発電量のムラに対応するためにも、蓄電池との組み合わせは非常に相性がよく、発電量の少ない時でも、蓄えた余剰電力を利用して安定した運用が可能です。また、電力需要が急増する時間帯に蓄えた電力から供給すればピークカットが実現し、電力系統全体の安定度向上や電力料金の削減が期待できます。
・産業用は家庭用の蓄電池と何が違う?
産業用蓄電池と家庭用蓄電池の最も大きな違いは蓄電容量です。産業用蓄電池は、数十kWhから数百kWhの大容量で500kWhを超える大型のものも存在しますが、一般的な家庭用蓄電池は、消防法で最大容量17kWh以下に制限されています。
・産業用太陽光発電の蓄電池の種類
産業用太陽光発電の蓄電池にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴や利用状況を考慮して、最適な選択を行うことが重要です。以下に、代表的な4つの蓄電池の種類について紹介します。
◆NAS電池
NAS電池は、ナトリウム硫黄蓄電池の略称で、ナトリウムと硫黄を用いた大容量の蓄電システムです。高い発電効率とサイクル寿命を持っており、急激な充放電が可能です。約300℃の高温で作動するため、冷却システムや防火設備の設置と定期的なメンテナンスが欠かせません。大容量のエネルギーが必要な発電所や工場、商業施設、公共施設で使用されています。
◆鉛蓄電池
鉛蓄電池は、電極に鉛を用いた蓄電池です。比較的安価で入手しやすいため家庭用や自動車用にも広く使用されています。充放電の繰り返しによって性能が低下するので、頻繁な充放電が発生する大規模な施設では不向きです。1kWhあたり約30kgの重量があり、100kWhの鉛蓄電池は約3tになるので、設置場所の確保が必要であるほか、破損すると硫酸が漏れだして爆発する危険性もあるので注意が必要です。不具合が起きづらいので、人命にかかわる機器を使用する病院やパソコンなど情報機器を多用するオフィスビルの非常用電源として使用されています。
◆リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、電極にリチウムを用いた蓄電池です。軽量でコンパクト、長寿命、発電効率が高いという特徴によりスマートフォンなどモバイル機器にも使われています。外部からの衝撃や熱を起因とする発火や爆発の危険性があるので、保護回路や温度センサーなどの安全装置を設置するなど、安全対策が不可欠です。コンパクトなため、コンビニエンスストアや小規模な店舗などでピークカットや自家消費目的で導入されているほか、長寿命で電力の安定化を図れることから大型商業施設や工場でも使用されています。
◆ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、電極にニッケルと水素を用いた蓄電池です。水素と酸素を用いて発電する仕組みなので、環境に優しく安全性が高いとされています。小型の電化製品に使われているほか、電車やバスなどの公共交通機関でも使用されています。急激な充放電が可能なので太陽光発電との組み合わせが有望視されていますが、容量が小さいことや寿命が短いことが難点で、一般的には500回から1000回の充放電が限度とされています。
■産業用蓄電池を導入する価格の相場は?
蓄電池の本体価格は、メーカーや容量、種類や機能によって異なりますが、比較的安価なものでも1台100万円前後です。種類による1kWhあたりの価格の目安は下記の通りです。
◆NAS蓄電池:4万円/kWh
◆鉛蓄電池:5万円/kWh
◆リチウムイオン蓄電池:20万円/kWh
◆ニッケル水素電池:10万円/kWh
同時に、太陽光発電システムなどを導入する場合、その設置費用も必要です。すべてのコストを合わせると数千万円単位となるケースもあります。ただし、節電効果によるランニングコストの削減は期待できるので、長い期間を通した合計コストで検討しましょう。
・設置費用・電気工事の費用
設置工事費用や電気工事費用について解説します。
設置工事費用は設置場所や工事内容、建具の有無などによって大きく異なりますが、おおよその価格は30万円前後です。ただし、屋外に設置する場合は、これにプラスして建屋の建設費用も必要です。
また、電気工事では、電気系統との配線工事や太陽光発電の機材との連携工事が必要なので、各業者と打ち合わせの上で見積もりを取得する必要がありますが、30万円前後を目安としておくといいでしょう。
■蓄電池の補助金制度はある?
産業用蓄電池を導入には、国や地方自治体の補助金が利用できることがあります。
電力の安定化や省エネ効果などに貢献する企業や施設に対し、費用の一部をサポートするための制度が多数あります。その中には産業用蓄電池導入に対する補助金制度もあるので、積極的に検討してみましょう。下記で代表的なものを紹介します。
※補助金の中には、家庭用の蓄電池導入を対象としているものもありますので「産業用の蓄電池導入」で利用できる補助金を探しましょう。
◆経済産業省「産業用蓄電池導入促進事業」
2023年度から開始された制度です。
補助対象となるのは、工場や商業施設、公共施設などで、電力の安定化やピークカット、自家消費などの目的で産業用蓄電池を導入する事業者です。
産業用蓄電池の導入費用のうち、蓄電池の本体価格の半分(最大で1億円)を上限として補助されます。
補助金の申請は、毎年度の公募に応じて行われ、申請の際には、蓄電池の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)を、経済産業大臣に提出して、その認定を受ける必要があります。
2023年度は15件の事業者が利用し、約30億円の補助金が認定されています。
詳しい内容については下記リンクをご覧ください。
◆環境省「地球温暖化対策事業費補助金」
2009年に開始後、数度の改編を繰り返しながら2016年から開始された制度です。
補助対象となるのは、太陽光発電や風力発電などの創エネ機器と併用して、産業用蓄電池を導入する企業や施設です。
産業用蓄電池の導入費用のうち、蓄電池本体価格の3分の1(最大で1億円)を上限として補助されます。
補助金の申請は、地球温暖化対策計画に基づいて、毎年度の公募に応じて行われます。
申請書類には、事業の概要や効果、費用見積もりなどを記入する必要があり、申請書類の様式は、環境省のホームページで公開されています。
詳しい内容については下記リンクをご覧ください。
◆地方自治体の補助金制度
産業用蓄電池の導入に対する補助金制度が設けられている地方自治体もあります。補助金の額や条件はそれぞれ異なりますので、詳しくは各地方自治体のwebサイトなどで確認してください。
参考として、茨城県で実施している補助金制度について紹介します。
① いばらきエネルギーシフト促進事業補助金(※この補助金の令和5年度の募集は終了しています)
補助対象となるのは、県内事業所に自家消費型太陽光発電設備や蓄電池を導入する事業者です。発電した電力を当該事業所で使用する自家消費型太陽光発電設備と、それと一体的に使用する蓄電池を補助対象として、導入経費の一部を補助します。
補助金の上限額は、太陽光発電設備は12万円/kW、蓄電池は9万円/kWh(最大で1億円)です。
詳しい内容については下記リンクをご覧ください。
② 蓄電池補助金(※こちらは家庭用蓄電池を対象とした補助金です)
家庭用蓄電池に対する補助制度を設けている市町村へ補助金を交付するものです。
補助対象となるのは、太陽光発電設備と連携した発電出力10kW未満、かつ、住宅に設置したものです。
詳しい内容については下記リンクをご覧ください。
茨城県 自立・分散型エネルギー設備(家庭用蓄電池)導入促進事業費補助金
■まとめ
産業用蓄電池の種類や費用について紹介しました。蓄電池の導入には多くのコストがかかりますが、補助金制度を利用することで、負担を軽減することができます。産業用蓄電池を導入する際には、自分の事業や施設の規模やニーズに合わせて、最適な容量や種類の蓄電池を選ぶことが重要です。
産業用蓄電池の導入に興味がある方は、ぜひ平沼電設にご相談ください。茨城県内で豊富な実績を持つ当社は、お客様のニーズに合わせた最適な蓄電池の提案と設置を行います。
平沼電設では、産業用蓄電池の無料見積もりや相談を承っております。茨城県の補助金制度の詳細や申請方法もお気軽にお問い合わせください。