皆さん、こんにちは。
茨城県鉾田市を拠点に電気工事を手掛けております平沼電設です。
私たちの生活に欠かせない電気は、発電所で作られ全国各地に届けられています。そのルート上にあり、電圧の調節を担っている重要な設備が「トランス(変圧器)」です。トランスにはいくつかの種類があるので適切なものを選ぶ必要があり、機能維持や事故防止のために定期的な点検・交換も求められます。ここでは、トランスの仕組みと役割や種類、点検や交換のタイミングについて解説します。
■高圧電力向けのトランス(変圧器)の役割
発電所で作られた電気は、最初は数万Vもの超高電圧になっています。これは送電における電力損失を少なくするためなのですが、その状態のまま電気を利用者に送っても、電圧が高すぎて使うことができません。
そのため、作られた電気はいくつかの変電所を通過し、少しずつ電圧を下げながら送られます。最終的には、一般家庭でも使用可能な100Vや200Vまで電圧が下げられ、各家庭やお店などに供給されます。その電圧調整のために使われる設備がトランス(変圧器)です。
また、工場やビル、商業施設といった大量の電力を消費する施設では、6,600V(都市部の場合)の高圧電力で受電した上で、敷地内の高圧受変電設備によって電圧を下げ、施設内の各所に送るケースが多く見られます。この際にもトランスが使用されます。
つまりトランスは、私たちが電気を使う上で必要不可欠な設備なのです。トランスに不具合があれば電気が使用不能になるため、トランスの定期点検は確実に行う必要があります。
■高圧電力向けのトランス(変圧器)の種類と特徴
トランスには、「油入変圧器」「モールド変圧器」「ガス絶縁変圧器」といった種類があり、状況に応じて使い分ける必要があります。各トランスの特徴を確認しておきましょう。
・油入変圧器
油入変圧器は、絶縁性・冷却性に優れた絶縁油で満たされた容器に、鉄芯と巻芯が入っている変圧器です。変圧器の中では最もメジャーで、全体の約9割を占めています。
油入変圧器のメリットは、他の変圧器に比べて価格が安いことです。これは、絶縁と放熱を両立させた絶縁油の活用により、安全性を確保しつつも製造コストを抑えていることが関係しています。
また、金属製の外装を採用しているため、屋外でも使用可能です。自冷却方式の場合は、満たされた絶縁油の効果で騒音や振動も抑えることができ、空冷式の場合でも騒音はそこまで大きくありません。耐負荷性能が高く、過負荷運転に強いのも大きなメリットです。
一方、絶縁油は可燃性なので、高温の条件下などでは発火するおそれがあります。自治体の条例によっては消火設備の設置義務が生じる場合もあり、消火設備の設置スペースやコストも意識しなければならないので、各種規定の確認が必要です。
また、油入変圧器は他の変圧器に比べて重く、設置場所には支えられるだけの強度が求められます。冷却ファンを取り付けている場合は稼働させるための電力が消費され、定期的な清掃やメンテナンスも行わなければなりません。
そして忘れてはならないのが、油入変圧器の要である絶縁油は定期交換が必要だということです。使用開始時点の絶縁油は無色透明ですが、長期間使用していると劣化し、赤茶けた色に変色してしまいます。もちろん絶縁や冷却といった機能も低下するので、定期的な点検や交換を必ず行いましょう。
・モールド変圧器
モールド変圧器は、絶縁体として樹脂を使用している変圧器です。変圧器内部の一次巻線と二次巻線の表面を、樹脂で含浸モールドしている(覆っている)ことからこの名称がつけられています。
モールド変圧器のメリットは、油入変圧器と異なり油を使用していないため、火災のリスクが低いことです。樹脂による含浸モールドで温度上昇も抑えられており、安全性が高い変圧器だといえます。そのため、病院や地下鉄といった公共施設でよく採用されます。
また、他の変圧器に比べてサイズが小さく重量も軽いため、設置場所をあまり選ばず点検が容易な点も魅力です。湿度や粉塵に対する耐久性も高く、特に耐湿性が優れている点は、高温多湿の日本において大きなメリットとなります。
その反面、同程度の容量だと、油入変圧器に比べて価格が高いのがデメリットです。また、基本的に安全性は高いのですが、コイルが露出しているので感電のリスクがあります。そのため、モールド変圧器は屋外での使用には適していません。
加えて、油入変圧器よりも耐過負荷性能が低く、駆動音が大きいといった弱点もあります。使用にあたっては、あまり負荷をかけないようにしたり、防音対策を施したりといった配慮が必要です。
・ガス絶縁変圧器
ガス絶縁変圧器は、SF6(六フッ化硫黄)という不活性ガスを絶縁媒体として使う変圧器です。油入変圧器の絶縁油の代わりに、SF6で容器を満たしていると考えていいでしょう。
ガス絶縁変圧器の最大のメリットは、SF6ガスが不燃性のため安全性が高く、結果として防災設備の設置や点検が省略できることです。オイル漏れの心配もなく、耐湿性や防塵性にも優れています。コンサベータ(油膨張の吸収用タンク)も不要なので、変圧器の高さを低くすることができます。
こういった豊富なメリットにより、ガス絶縁変圧器は1980年代から急速に普及し、特に都市部の地下式・屋内式変電所でよく採用されるようになりました。しかし、SF6ガスは温室効果ガスの一種であることから、最近は生産を控えるメーカーも出てきています。一方、SF6を使用しないガス絶縁変圧器の開発に取り組んでいる企業もあります。
■高圧電力向けトランス(変圧器)の点検のタイミングと寿命
トランスは電気を使うために必要不可欠な設備であり、もしトラブルが起きれば電気が使用不能になる他、火災や停電などの事故を引き起こすリスクもあります。そのような事態を防ぐためにも、トランスは定期的にメンテナンスを行うとともに、寿命を迎える前に交換しなければなりません。
やや古いデータですが、日本電気工業会の資料(※)によると、2011年度に発生した自家用電気工作物の波及事故の原因中、36%を「保守不備」が占めていました(経済産業省の統計に基づく)。電気設備の保守点検が非常に重要であることがよくわかります。では、どのようなタイミングでトランスを交換すればいいのでしょうか?
※https://www.jema-net.or.jp/jema/data/s5223(20190329).pdf
一般的なトランスの寿命は、20年~25年程度です。ただ、20年以上経過してからの更新は推奨されません。万が一故障したり事故が起きたりすれば、復旧するまでに多大な時間や費用がかかる可能性があるからです。
それに加え、使用する環境や状況によっては、劣化が早くなり寿命が縮んでいる可能性もあります。たとえば、周辺の温度が高い場所で使用すると、過負荷と同じ状態になり寿命を短くしてしまいます。外見は正常でも、内部では異常が発生しているかもしれません。
不測の事態を防ぐためにも、トランスを無理に長期間使い続けるのは避け、少し早めに更新するのがおすすめです。もちろん、定期点検で不具合が見つかった場合は、すぐに修理・交換しましょう。
また、トランスを更新すると、省エネルギー効果も期待できます。古いトランスは最新型に比べてエネルギーの消費効率が悪いのに加え、劣化によってさらに機能が低下しているからです。
古いトランスを最新型に交換すれば、エネルギーの消費効率が大幅にアップし、電気代の削減が期待できます。さらに、CO2排出量の削減にもつながり、地球環境に優しいなど多くのメリットがあります。たとえまだ動くトランスでも、設置から年月が経過しているなら更新するのが望ましいのです。
実際にトランスを交換する必要があるのか、またどのような製品に交換すればいいのかは、現在のトランスの状態や現場の状況を調査した上で判断する必要があります。高圧トランスを安全に、かつ効果的に使用するためにも、まずは専門業者に点検を依頼してみてはいかがでしょうか。
平沼電設では茨城県鉾田市を拠点に、関東圏内で電気工事を手掛けています。トランスの点検や交換はもちろん、工場やビルの引き込み工事から配線工事、キュービクルの設置、漏電対策、緊急時の修理、各種点検・メンテナンスまで何でも対応可能です。
長年の実績と安全第一の施工管理で、質の高いメンテナンス、場合によっては修繕をお約束します。電気設備に関して少しでも困ったことがあれば、お気軽にご相談ください。